美味しいのその上のときめきを。豊川の水から作る世界に誇る日本酒

キラリと光る東三河の企業を紹介! Vol. 12 福井酒造株式会社

東三河は農工商バランスのとれた産業構造となっており、製造品出荷額等や農業産出額が全国的にも有数の規模を誇っています。そんな東三河を拠点に活動する魅力的な企業を取材し記事として紹介していきます。
第12弾は、愛知県豊橋市に本社を構える福井酒造株式会社です。
代表取締役の福井知裕様にお話を伺いました。

事業概要を教えてください

福井酒造では日本酒の製造及び販売業務を行っております。明治45年(1912 年)に渥美郡福江町 戸田家陣屋跡の井戸水を借りて創業し、昭和27年(1952年)に業容拡大に伴い、豊橋市中浜町の旧陸軍18連帯の跡地4000坪に酒造を移転しました。以来、112 年間 地元東三河の地酒屋として酒を醸し現在に至っています。
もともと愛知県豊橋市は多品種の農作物が生産される農業王国です。日本酒造りに適した、酒米(夢吟香)と、日本一の水質にも選ばれた豊川の水をふんだんに使える恵まれた環境のもとで、美味い!の上を目指し、呑んだ人を唸らせるような味を探していきたいと考えております。

会社の特徴や拘り、強みについて教えてください

福井酒造のこだわりは主に3つございます。
1つ目は「自慢の水」です。
当社のお酒の仕込み水は、地下50mを流れる地元豊川と100mを流れる天竜川の伏流水を使用しています。市販の軟水ミネラルウォーターと吞み比べると明確に違うその味わいは、厚みがあるのに飲み易く、当社の酒造りの生命線となっています。

2つ目は「技術」です。
当社使用の「小釜」は生産性こそ非効率な反面、味の安定を盤石にします。繊細な日本酒と100年にわたり、向き合ってきたノウハウは焼酎造りにも生かされ、お酒造りの免許は12種まで拡充(15種が最大)。1世紀に亘るお客様の要望を受け止めてきたことが、技術の積み重ねになりました。

3つ目は「人」です。
“良い酒を醸す”のも人、飲むのも人。人に感謝し、お客様の心を魅了する「和合良酒」を醸す。「伝統」に新たな「技術」で挑戦する。それが品質の高さとお客様の満足に繋がると信じて酒を造っています。

この3点をこだわり抜いた結果、2013年に大吟醸「極」が全国新酒鑑評会で金賞を2023年のIWC(インターナショナル・ワイン・チャレンジ)では大吟醸「極」がGOLD。「CICADA01」 がSILVERとダブル受賞を果たしました。

最近の挑戦について教えてください

創業110年のタイミングで私の想いやこだわりをもとに、杜氏頭との二人で4年の歳月をかけ、「CICADA」という従来の概念にとらわれない革新の新ブランドを造りました。近年日本酒の消費量は減少傾向であり、特に若い方から日本酒は選ばれにくくなっていると感じています。そこでCICADAはワイン造りから着想を得て製造を開始しました。一般的に日本酒のアルコール度数は15度前後ですが、CICADA 01はアルコール度数8%に抑えたスパークリング清酒です。泡はシャンパンのように一口飲んだ時に柔らかく、口の中ではぜるようにこだわっています。普段はあまり日本酒を好まない息子もCICADAはもう一度飲みたいと言ってくれています。
このように日本酒初心者の若い方でも選んでいただきやすいように福井酒造110年の技術を集結させた新ブランドをつくったので、今後はそういったターゲット層にこのお酒の認知を取るべく、PRや広告手法もこれまでとは違った方法にチャレンジしていきたいと考えています。

東三河の魅力について教えてください

繰り返しになりますが、やはり一番は日本一の水質にも選ばれた豊川の水と、日照時間等農業が盛んな土地で育てられた酒米をふんだんに使える環境です。
さらに全国に出荷するのには日本の真ん中という立地も魅力のうちの一つだと考えています。
また、仕事柄国内や海外に出張するケースも多いですが、アクセスの良さも普段から感じられる魅力です。

移住希望の方へ

東三河は産業も豊かでたくさんの魅力的な働き先があります。福井酒造の杜氏は王砿生 (Wang Yusheng)さんという日本唯一の中国人杜氏です。王さんは吟醸造りの名人、越後杜氏・田中栄治氏の一番弟子で1992年に来日し、平成27年(2015年)に杜氏就任しました。日本の杜氏よりも杜氏らしいと評され、麹の赴くがままに合わせた丁寧な生産が特徴です。さらに杜氏見習いの方も神奈川県からの移住者です。
その他も弊社だけで複数の移住者が在籍していますし、他の会社でも他県から来た方が活躍している話はよく聞きます。
移住希望者の方はまずは東三河の仕事を調べてみると産業の豊かさを感じることができるのではないでしょうか。

インタビューを通して

酒蔵というと北陸や東北のイメージが強いかと思いますが、豊橋市にも112年の歴史を誇る酒蔵があります。豊橋市は路面電車が走る数少ない市のうちの一つですが、冬は「おでん車」夏は「ビール電車」と題して路面電内で宴会をしながら電車に乗れるイベントを実施しています。おでん車・ビール電車では福井酒造の日本酒も振舞われ、地元に密着している様子がうかがえます。
また、福井酒造のメインブランドは「四海王」とい、四海とは世界、天下の意味であり、四海王とはすなわち世界一の酒元になるという想いが込められています。新ブランドCICADAを始めその他商品も海外進出を始めており、地元を大切にしつつ、世界に誇る酒造りを東三河で行っている会社です。

※取材日(2024年2月20日)時点の情報です。

会社名福井酒造株式会社
住所愛知県豊橋市中浜町214番地
創立明治45年(1912 年)
代表取締役福井 知裕
HP福井酒造株式会社HP