ワイヤレス給電で「充電する」を無くすベンチャー集団

キラリと光る東三河の企業を紹介! Vol. 01 株式会社パワーウェーブ

東三河は農工商バランスのとれた産業構造となっており、製造品出荷額等や農業産出額が全国的にも有数の規模を誇っています。そんな東三河を拠点に活動する魅力的な企業を取材し記事として紹介していきます。

第1弾は、国立大学法人豊橋技術科学大学発ベンチャーの株式会社パワーウェーブです!
代表取締役社長の阿部 晋士(あべ しんじ)様にお話しをお伺いしました。

会社の概要を教えてください。

株式会社パワーウェーブ(以下、パワーウェーブ)は2021年3月に設立された、電動モビリティの充電課題に対し、
ワイヤレス電力伝送技術で挑むテック系ベンチャー企業です。
分かりやすく言い換えると、乗り物の電気を無線で供給しようという取り組みをしている会社です。

パワーウェーブのonly oneについて教えてください。

ワイヤレス給電の方式で最もメジャーな方式は「磁界結合方式」です。2つのコイルを接近させて一方のコイルに電流を流すと、
コイルを貫くように発生する磁束を媒介にして、もう一方のコイルにも起電力が生まれるという現象を活用した伝送方式です。
近年私たちの生活にも身近となった、置くだけで充電ができるスマートフォンのほとんどはこの方式が採用されています。

それに対しパワーウェーブは、電界の変化を介して高周波電力を伝送する「電界結合方式」を採用しています。
電界結合方式とは送電側と受電側にそれぞれ電極を対面させ、高い周波数で電気を流すと相手側電極にも電気が流れる現象を活用した伝送方式です。

電界結合方式の優位性としては、主に2つあります。

①距離に強い
電力を送る送電電極と電力を受け取る受電電極の距離が30cm離れていた場合でも約90%の伝送効率を確認。
トヨタのランドクルーザーが225mmなのでほとんどの自動車に地面から送電が可能となり、スマートフォンの充電のように送電側と受電側をくっつける必要がなくなります。

②薄型電極で広範囲を給電
厚さ3mmの薄型電極で送電が可能なため設置コストが抑えられ、実装のハードルを下げることが可能です。
さらに、長い送電電極を設置することによって、広範囲な給電が可能となり、位置ずれの影響をうけにくい構造となります。この2つの点から、ビークルの停止中給電はもちろんのこと、走行中給電も可能となります。
さらにパワーウェーブは、高周波電源・送電電極・受電ユニットの3つの装置全ての開発を進めており、一気通貫で対応することが可能です。さらに3つの規格すべてを独自技術としてモジュール化を進めています。
電界結合方式の原理実証から行うパワーウェーブだからこそ、個別のニーズに沿った設計がスピーディーに実現します。

パワーウェーブのありたき姿を教えてください。

パワーウェーブは電動モビリティの充電課題に対し、「充電をする」という概念をなくしていくという社会を目指しています。

大電力×広範囲でモビリティの停車中・走行中の給電を可能にすることで、24時間の稼働や、人が行きにくい場所で活躍するロボット、移動するモビリティなど非接触での充電で全てのアプリケーションが充電という作業を忘れるくらいスムーズな電力供給を実現させます。
充電をするという概念がなくなり、生活者にはそれが当たり前で知られていないが、インフラ関連の会社からは無くてはならないような会社になることを目指しています。
また、「波動で世界に動き続ける力を供給する」という理念のもと、波動の力を活用し、広範囲かつ大電力をワイヤレスで伝送する技術を、社会に広げることで、カーボンニュートラルな世界を目指しています。
地球温暖化や化石燃料の枯渇に代表される地球規模の課題に、世界に波動で動き続けるパワーを供給する、新しいスタンダードを提案していきます。

最近の挑戦・取り組みついて教えてください。

現在はパワーウェーブの技術を使った実証実験を積極的に行っています。

・電動キックボード(福岡地所×⼤成建設×mobby)
九州最大級のアウトレットモール、マリノアシティ福岡にて、電動キックボード「mobby」や電動ゴーカート「Ninebot Gokart」の試乗体験ができるイベント「モビリティサーキット in マリノア」が開催された際に大成建設株式会社と共同で、電動キックボード「mobby」に対して、電界結合手法を用いたワイヤレス給電に関する実証実験を行いました。
キックボードの底部に搭載できる受電装置が欲しい、という要望のもと、厚さ20mmの薄型受電装置と床下埋設給電装置を開発しました。電界⽅式の強みである、電極の薄さを活かした、⾞体に外付けで受電装置と充電装置を搭載しました。床は⼨法要件を決めて取り外し可能なパネル状に実装し提供しました。充電スポットの⾒せ⽅や充電スポット内の配置、床下構造などを含め協議をしながら実証実験まで進め、公開実験を⾏ないました。

詳細はコチラをチェック!

・パーソナルモビリティ(知の拠点あいち、中部国際空港など)
床の上どこででも給電されるワイヤレス給電⽅式が欲しい、という要望のもと、原理発明から実証実験まで実施しました。電界⽅式の強みである、電極の⾃由な設計(重なりを幾何学で扱える)を活かし2次元移動と360度回転に対応したシステムを発明。実際に1m x 1m の範囲で100Wを供給できることをロボットへの⾛⾏中給電で実証しました。本技術の⼀部を利⽤し、空港におけるパーソナルモビリティに駐⾞中充電の実証実験を計画中です。

詳細はコチラをチェック!

現在の課題・今後の展望について教えてください。

現在の課題は実証実験を通して、より具体的な事業メリットを明確にしていく事と、他企業が魅力的に感じる実績を作る事です。例えば、大型施設を走るパーソナルモビリティやキックボード、または製造工場や物流工場で活躍する大型のAGV等の充電に課題をお持ちの企業があれば協業をしていきたいと考えています。
今後の展望としては、2022年度中に電気自動車で駐車中給電を成功させ、2030年に高速道路での走行中給電を成功させるという目標に向かって取り組んでおります。

インタビューを通して

取材の中で最も印象に残っているのは「「充電をする」という概念をなくしていく」という言葉です。
近い将来には、充電器や、電池の残量、走行可能距離なども表示する意味すらない社会になるのでしょうか。
パワーウェーブの強みでもある、走行中給電がインフラとして可能になればこの言葉の現実性もグッと高まると感じました。
今後も、電動モビリティの充電課題という世界共通の課題に技術のチカラで取り組むベンチャー企業から目が離せません。

※取材日(2022年10月12日)時点の情報です。

会社名株式会社パワーウェーブ / Power Wave Co., Ltd.)
住所〒441-8580 愛知県豊橋市天伯町雲雀ヶ丘1-1 豊橋技術科学大学 I-1-301
設立2021/3/22
国立大学法人豊橋技術科学大学 (大学発ベンチャー認定 / 2021.4.15)
取締役代表:阿部晋士
種田憲人
HP株式会社パワーウェーブHP
電話番号0532-81-5201
メールinfo@powerwave.co.jp